逆転スペクトル

元ニートでナヨナヨな一児の父が綴る、由なし事。

青い瞳の裏天狗男(QRコード付き)

ある日の夜勤明けの地下鉄。居眠りからふと目が覚めて顔を上げると、大きなQRコードが前面にプリントされたTシャツを着ている外国人の青年が、天狗のお面を後頭部に装着しつつ爽やかに笑いながら向かいの席に座っていた。

 

「まだ居眠りから充分に覚醒してないせいで見えた珍夢の余韻かな。最近疲れ気味だからな」などと苦笑しながら頭を軽く振って再び前方を見直すが、その違和感の化身は、そのままの姿で向かいの席に鎮座ましましている。なんならさっきより彼の笑顔の爽やかさが一段と際立った気さえする。

 

…どうやら現実の光景らしい。

 

動揺を隠しきれない私の脳は、なんとかこの認知的不協和を解消しようとようやく回転し始めるが、世界の奇祭や呪術に精通しているわけでもない私には、この状況を解析しようにも、思考のよすがとなる情報が絶対的に不足している。

 

唯一謎を解く手掛かりになりそうなのが、彼のTシャツにデカデカとプリントされているQRコードだが、その情報を読み取るためにiPhoneのカメラを彼に向ける勇気がでない。

もしかしたら、アプリがQRコードを読み取ることがトリガーとなって天狗の呪いが相手に乗り移るという、IT技術に適応した新時代の黒魔術が、目の前の異国の青年に掛けられているのかも知れないではないか。呪われてあんな格好で街中を歩くなんて絶対に厭だ!

 

…などと、好奇心と恐怖心の狭間でフンフンむちむち踊りしているうちに、地下鉄が新宿で停車するやいなや、彼は軽やかなステップで車両を降りて人波に消えてしまった。

  

その後は彼の姿はおろか、スタンダードスタイルで天狗のお面をかぶっている日本人さえ見かけたことはない。時の経過につれて、私の中では「ああいう妖精だったのかもしれない」という合理的な結論に落ち着きそうなのだが、そんなこんなで未だにあのQRコードに込められていたであろう貴重な情報に想いを馳せたり、馳浩のモノマネをしなかったりしている私である。

 

 

QRコードリーダー QuickMark

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その時私が使おうとした、QRコード読み取り用iOSアプリ。

普段の生活では宅配の不在配達票のコードを読む時くらいにしか使わないけど、今のところ認識ミスはない。QRコード作成機能やMacとの連携機能もついていて無料。広告も見たこと無い。アプリ内課金は、いちいち読み取り結果を確認しないで連続でスキャンして履歴に残せる「連続モード」(200円)だけの模様。 

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そして時は動き出す

子どもが楽しむ姿を見るのは嬉しいものだ。愛しい娘が見せる笑顔は、私にとっての仙豆である。そして今日も私は、娘が楽しみ笑ってくれるよう試行錯誤しながら一緒に遊ぶ。

今日はそんな日々の中で生まれた、我が家の多分オリジナルな「遊び」を一つご紹介しようと思う。

同じ年代の娘以外の子どもさんにもそれなりに通用し、保育園に娘を預ける時にそれを見た保育士さんにも 笑われた 面白がってもらえたので、ある程度の普遍性があるのではないか。

事前に何も用意する必要は無いし、手ぶらでいつでもどこでもスタートできる簡単な遊びなので、是非あなたのご家庭の「遊び」の引き出しに加えて有効活用していただくなり、そのままタンスの中で腐らせていただくなりして欲しい。

名前

その遊びの名前は、

( …って、そういやこの記事を書くまで名前なんて考えた事もなかったぞ…前に保育士さんには「気絶ごっこ」って説明した気もするけど、なんかそれだと誤解されそうだから…そうだな…よし! )

そして時は動き出す

という。
…あ、はい、ジョジョ大好きです。

対象年齢

言葉のやり取りができるようになってきて、「いないいないばあ」では物足りなくなってきた頃。いつまで通用するのかは不明。

基本ルール(の教え方)

  1. 子どもとコミュニケートしてる途中で、親が脈絡なく動きを止める。ディオのスタンドの時を止める能力が発動したかのように。
    ※ 目線を外して口を開けたままにするなど、より子どもに分かりやすく「固まる」のが、コツといえばコツ。
  2. 初めて見せる時は、おそらく子どもは何が起こったのかと不安になり「パパ?」「どうしたの?」などと話しかけてくるが、ここはじっと固まったまま我慢
  3. いずれ耐えかねた子どもが親に物理的な接触を試みてくると思うので、子どもが親の体のどこかに触れた刹那、
    「はっ!ありがと〜。チコちゃんのおかげで元に戻ったよ〜」
    などと、触ってくれたことでまた親の時が動き出したことを大げさに感謝する。

…ここまでの説明で「なに言ってんだコイツ?(´・ω・`)」と思った方も多いだろうが、実際に笑って面白がるのだから仕方ない。そして「もっかいやって!」と何度も何度もリクエストされるのだ。

理論的背景

ドイツの哲学者カントや日本の落語家桂枝雀らが提唱した「笑いは緊張の緩和から生まれる」という「緊張の緩和理論」のフォーマットに則っていると考えられる。

「パパがおかしくなっちゃった(緊張)」→「元に戻って良かった(緩和)」ということで、消えちゃった相手がまた現れ安心して笑う、とされる「いないいないばあ」の系譜にある。

「そして時は動き出す」略して「ソシトキ」の、もう一つの理論的な重要ポイントが、

「緊張状態から緩和への切替決定権が、子ども本人の手に委ねられている」

という点である。ここが受動的な遊びである「いないいないばあ」とは決定的に異なっている。

自分の意思に基づく行動が相手や世界を変化させるということは、それまで受動的なコミュニケーションが主だった彼女たちにとって、我々の想像以上のコミュニケーションのブレイクスルーであり、まだまだ新鮮でエキサイティングな体験なのではないだろうか。

そんな主体的体験を、分かりやすくビビッドな形で呈示するのが、この「ソシトキ」という遊びなのである。たぶん。

応用編

基本ルールで繰り返し、子どもが「ソシトキ」に慣れてきたら次のステージに進もう。

ただしここから先は、子どもの個性によって道が分岐すると思われるので、ここでは我が家における「ソシトキ」の遊びの進化の流れを説明する。

  • 「チコちゃんもやってみたら?」と、今度は親がやっていた役を娘に促してみたところ、少し考えたあとにかなり大げさに私の真似をして、顔を横に向け視線をそらし「はっ!」と口をあんぐりと開けて固まってくれた。その仕草のコミカルさを見た時は、この遊びを開発して良かったと真底思った。
  • ひとしきり笑って時が止まった娘の顔に私がタッチすると、二へへーと破顔しながら「なおった〜」。
  • そしてさらに次の段階として、今度は口を開けて固まる娘を、そのまま放置してみた。すると時が止まっているはずの彼女は、なかなか触ってくれない父の方をチラチラとみて様子を窺い、それでも動かないと、業を煮やしてそんな父の手を取って強引に触らせようとしてきた。
  • そんな必死のアプローチも拒否して放置を続け、どうするのかな〜と思っていると、ついに彼女は自分の手で自分の顔を触り「なおったー」と、まさかの自己解決。止まった心臓を自分でマッサージしやがったキン肉マンジェロニモかよ。ルール無用の彼女は「チコちゃんが自分でやった!」と満足げである。
  • なんだかくやしいので、真似して今度は父が時が止まった自分の顔を触ろうとしたら、そこに娘がサッと割って入って父の顔を先に触り「チコちゃんがやった!」と防衛される。
  • さらにくやしいので、今度は娘が時を止めるや否や父が先にタッチすると、笑いながら「チコちゃんが自分でやるの〜!」と抗議される。なんだこれ。
  • それ以降は「時を止めた相手の顔に、どっちが先に触れるかを親子で競うあう」という謎ゲームへと「ソシトキ」は変貌して、現在に至る。

理論的には「果たして自分が相手に先んじることができるのか?」という緊張を緩和する別の遊びになったと言うこともできるが、楽しいからどうでもいいやそんなこと。 

 

脳をきたえる「じゃれつき遊び」―はじめて出会う育児シリーズ 3~6歳 キレない子ども 集中力のある子どもに育つ

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純粋理性批判 上 (岩波文庫 青 625-3)

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ジバガニのせいなのね?

先日二歳の娘のまぶたの腫れを診てもらうため、ビルの2階にある眼科へ行こうと、娘を抱っこしながらエレベーターに乗った瞬間、娘が唐突に「カニさんがいるよ!」と言い出した。


しかし乗り込んだエレベーター内をさっと見回しても、そこに蟹らしきものは一切見当たらない。

「もしや娘はその豊かすぎる感受性ゆえに、おれには見えない蟹の地縛霊でも見え……はっ!もしやジバガニ?! 妖怪のせいなのね?そうなのね?!

…あたりまで思考が進んだところで閉まったエレベーターのドア内側に、「ドアに指を挟まれると痛いよ!」と注意を促す「人間の指をハサミで挟むカニさん」の絵が現れた。

 

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そう。

娘は前に眼科に行った時に乗ったこのエレベーター内の風景を覚えていて、カニさんの絵があることを事前に私に報告してくれたのだ。

 

しかしよく覚えていたものだ。

恐るべきは「地縛霊妖怪ジバガニ」などではなく、二歳児の記憶力ということか。

…というわけで、ジバガニの妖怪メダルは、どこのおもちゃ屋で並んでも決して手に入らないので、お気をつけください。

 

妖怪ウォッチ 01 ジバニャン

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Lサイズ たらばがに 足 1kg

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魔法

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幼稚園でのことはほとんど覚えていない。

でも一つ私の心に強烈な印象を残しているのが、送迎バスの運転手さんの「魔法」。交差点で赤信号でバスが止まったとき、彼が指をパチンと鳴らすと、その瞬間に信号が青に変わる。幼稚園に入ったばかりの私にとって、それは不思議な魔法だった。

そして親になった私は、保育園のお迎えの帰り道の交差点で、こっそりと交差通路の車両信号の様子をうかがいながら、歩行者信号が赤から青に変わる瞬間を、「せーのっ…ポン!」と娘に予言してみせている。

それを笑って喜ぶ彼女には、あのときの私と同じ「魔法」が見えているのかな。

 

6灯 スクランブル切替可 4信号 4歩行者専用信号 SS6-0404

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